当記事では、日本語文法における「体言止め」について解説します。
体言止めの意味や用法、効果、使う際の注意点などをわかりやすくご紹介しますので、ぜひ文章執筆の参考にして下さい。
体言止めとは
体言止めとは、文の最後を体言(名詞)で締めくくる文章表現のこと。修辞法(レトリック)の一種で、文に余韻を残したり、文章全体のリズムを調整したりする目的で用いられます。
例文を用意しました。
コーヒーを淹れるのが、朝の日課の一つ。
一般的な文だと「コーヒーを淹れるのが、朝の日課の一つです」となるところ、最後の「です(助動詞)」を省いて体言で終わらせています。こうすることで、少し余韻が残ったような文になりました。
このように通常の文とは「印象」や「読み味」を変えられるテクニックが「体言止め」という修辞法です。
体言止めを利用するメリットと用法、具体例
ここからは体言止めを利用するメリットや用法を、具体例を挙げながら解説していきます。
体言止めはとても便利な修辞法ですので、その効果や使い所を押さえておいて下さい。
語り口調を表現できる
何かの物事の説明文にて体言止めを使うと、語り口調のような印象的な文に仕上げられます。
文の印象を操れる、ライターにとって便利な修辞法。
通常であれば「修辞法は文の印象を操れる、ライターにとって便利なテクニックです」となるところ、体言止めを用いることでニュース原稿のような上品な語り口調になりました。
「AはBである」を「BなA」構文にすることで、少し上品な文に仕上げられるメリットがあります。
断定するニュアンスを強められる
一般的な文章からそのまま助動詞「です・ます・だ・である」などを抜くことで、断定を強調できます。
他所は他所。
通常であれば「他所は他所です」となるところ、体言止めを用いることで、ぶっきらぼうで有無を言わさないような断定のニュアンスになりました。
「AはBです」を「AはB」構文にすることで、強く断定する表現の文に仕上がります。
文に余韻を残せる
文末を代名詞や数詞、形式名詞などの「曖昧なニュアンスを持つ名詞」で終わらせると、余韻の残った文に仕上がります。
- それは君のこと。
- これは僕の秘密の一つ。
通常であれば「それは君のことです」「これは僕の秘密の一つです」となるところ、体言止めを用いることで含ませるようなニュアンスになりました。
体言止めは、少し余韻を残す文を作りたいときにも役立ちます。
文章のリズムを調整できる
体言止めと通常の文を混ぜて文章を構成することで、文章のリズムが単調ではなくなり、表情豊かに仕上がります。
例えば「〜です。〜です。〜です。〜です」と同じ文末を続けるのではなく「〜です。〜なこと。〜でした。〜です」とするなど、体言止めを用いることで「こなれた文章」になります。
「書く文章がなんとなく単調な気がする」という方は、ぜひ体言止めも用いながら文末表現を工夫してみて下さい。
体言止めを用いる際の注意点
さまざまな効果のある便利な体言止めですが、いくつか注意しておきたいことがあります。
下記注意点を押さえた上で、上手に使っていって下さい。
ビジネスシーンには適さない
体言止めはビジネスシーンで用いると「失礼な印象」を与える可能性がありますので、基本的には適しません。使わないようにしましょう。
もしも取引先に向けたビジネスメールの文末表現を工夫しようと思って「明日の商談は13:00に変更」などと体言止めで書いてしまうと、かなり失礼ですよね。
ビジネスメールでは「です。です。です。」と続いても、内容さえわかりやすければ問題ありませんので、体言止めは使わないようにしましょう。
使いすぎると読者に負担を掛ける可能性がある
体言止めの文を読むと、読み手の脳が自然と「です」「ます」などの助動詞があるように補完して考えてしまうという研究結果があります。
例えば「僕の仕事はWebライター」という文があったとして、脳が自然と「母の仕事はWebライター(です)」と読み替えてしまう傾向にあるということです。
そうするとやはり無意識に負担を掛けることになるため、あまりに体言止めを多用しすぎるのは考えものかもしれません。
体言止めはここぞというタイミングで、あくまでスパイスのように適度に使っていきましょう。
まとめ
体言止めは、手軽に文の印象を操れる修辞法です。
- 語り口調を表現できる
- 断定するニュアンスを強められる
- 文に余韻を残せる
- 文章のリズムを調整できる
このような効果が狙えますので、文中に適度に入れ込みながら、良い文章を書いていきましょう。
また体言止め以外の修辞法も下記の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。