「にゃーにゃー」「ゴロゴロ」などのカジュアルな言葉を使って表現する、擬態法(オノマトペ)について解説します。
文章の幅を広げてくれる表現技法ですから、ぜひ上手に取り入れられるようになっておきましょう。
なおオノマトペは「修辞法(レトリック)」と言われる技法の中の一つです。文章の表現技法を体系的に知っておきたい場合は、下記の記事もあわせて参考にしてください。
擬態法(オノマトペ)とは?
音や声、物事の様子などを文字に起こして表現する修辞法を「擬態法(オノマトペ)」と呼びます。
うまく使うと読者が情景を思い浮かべやすいことや、細かい説明を省いて伝えられるなどの利便性があり、現代ではさまざまな文章でオノマトペが取り入れられています。
例えば「そっちはまだ小降りなんだね。こっちはもうザーザー降ってるよ」と伝えれば、雨が結構な勢いで降っている様子を伝えられます。
「ザーザー」とオノマトペで表現するだけで、「こっちはもう屋根に雨が当たる音がうるさいくらい降ってるよ」「傘をささないと歩けないくらいは降ってるよ」などの、色々な例を考える必要がなくなるのです。
オノマトペを上手に活用できれば、より相手にとってわかりやすい伝え方ができるようになります。
オノマトペの語源
「擬態法」には、なぜ「オノマトペ」というちょっと聞きなれない言葉が当てられているのでしょうか。
まずオノマトペはフランス語です。つづりは「onomatopēe」で、日本語発音ではそのまま「オノマトペ」と読みます。
もっと遡ると古代ギリシア語の「onomatopoiia」が由来で、これは「onoma(名前)」と「poiein(作る)」が組み合わさった造語です。「言葉を作る」という意味を持ち、日本語発音で言えば「オノマトポイーア」と読みます。
「モノゴトの様子を言葉で表現して(あらたな言葉を作って)、わかりやすく伝える」という主旨の表現技法と考えておくと良いでしょう。
擬態法(オノマトペ)の種類と例文一覧
オノマトペで表現する言葉は、下記3つの種類に分けられます。
- 擬声語:生き物の鳴き声や声を表す(にゃーにゃー、コケコッコー、など)
- 擬音語:物事や自然の音を表す(ガタゴト、ザーザー、など)
- 擬態語:物事の状態や身振りを表す(ほっこり、ベトベト、など)
実は上記3つに正式な区別はなく、どれもひっくるめて「擬態語」と呼ぶことがあったり、擬声語を擬音語の中にまとめることがあったりもします。
細かく区別しておいた方が違いがわかりやすいことから、当サイトでは3つに分けて説明していきます。
擬声語(ぎせいご)の意味と例文一覧
擬声語は、生き物の声や鳴き声を表現した言葉です。
代表的な擬声語を、下記の通り一覧表にしました。
犬の鳴き声 | わんわん |
猫の鳴き声 | にゃーにゃー |
猿の鳴き声 | キーキー |
ニワトリの鳴き声 | コケコッコー |
ひよこの鳴き声 | ピヨピヨ |
ほととぎすの鳴き声 | ホーホケキョ |
フクロウの鳴き声 | ホーホー |
カラスの鳴き声 | カーカー |
このように、主に動物や鳥の鳴き声を表現するために使われるのが「擬声語」です。
擬音語(ぎおんご)の意味と例文一覧
擬音語は、物事の音を表現する言葉。自然のもの、人工的なものなど幅広い音が、擬音語で表現されます。
代表的な擬音語を、下記の通り一覧表にしました。
車輪で荷物を運ぶ音 | ガタゴト |
車の走る音 | ブーン |
床が軋む音 | ミシミシ |
ガラスが割れる音 | ガシャン |
雨が激しく降る音 | ザーザー |
雨が少量降る音 | しとしと |
風が強く吹く音 | ビュービュー |
様々なシーンで、物事を説明するときに自然と使っていることが多い表現が「擬音語」です。
擬態語(ぎたいご)の意味と例文一覧
擬態語は、動作や様子を表現する言葉です。
代表的な擬態語を、下記の通り一覧表にしました。
動き方をあらわす擬態語 | きびきびと動く のそのそと動く |
喋り方をあらわす擬態語 | ハキハキと喋る ボソボソと喋る |
歩き方をあらわす擬態語 | うろうろしている ふらふらと歩く キビキビと歩く |
心情をあらわす擬態語 | ワクワクする がっかりする うんざりする イライラする |
主に人や動物の動きや心情を表現するために「擬態語」が使われます。
オノマトペがよく使われるシチュエーション例
ではオノマトペは、具体的にどんなシーンで役立つのでしょうか。代表的な媒体を見ていきましょう。
絵本
絵本はオノマトペがよく使われる媒体の一つです。鳥の鳴き声や、雨の降る音などを「絵」ととも説明できるため、子供への知育にもぴったりだと言われています。
細かい説明が省かれるので、オノマトペの豊富に使われた絵本は読み聞かせもしやすいですね。絵本作家を目指すなら、優しいオノマトペの語彙は豊富に持っておきたいところです。
小説やエッセイ
小説やエッセイも、オノマトペがよく使われます。ジャンルにもよって多用すべきか否かは変わりますが、特徴的なオノマトペを使う作家は文体が印象に残りやすい傾向にあります。
例えば大正ロマン風のレトロな雰囲気を出すには、伸ばし棒を使わない「ギィギィ」「びゅうびゅう」などのオノマトペを積極的に使うと良いかもしれません。
広告表現
広告表現でもオノマトペがよく使われます。掃除や肌ケアなら「ピカピカ」や「ツルツル」などの表現がよく使われますし、食べ物なら「もっちもち」「あつあつ」などが使われます。
広告コピーを執筆する際には擬態語のバリエーションを多く持っておくと良いでしょう。
オノマトペを使うべきではないシチュエーション
オノマトペは便利な修辞法ですが、適さないシチュエーションもあります。覚えておきましょう。
明確な数値や指標を示したいとき
例えば仕事の報告書などでは、オノマトペを使うべきではありません。「今期はぐんぐんと業績が伸びました」ではなく「今期の業績は前年比120%の結果になりました」と報告しましょう。
あとは論文、技術書、マニュアルなどでもオノマトペは使わず、明確な数値や細かい指定を書くようにしましょう。
目上の相手へ物事を伝えるとき
仕事の上司や取引先などと連絡を取るとき、オノマトペは使うべきではありません。もちろん関係性ができていれば、その限りではないかもしれませんが、一般的にオノマトペは「カジュアルな表現」です。
敬語表現、礼儀正しい表現を使うときにオノマトペは適しませんから、TPOを考えて用いると良いでしょう。
オノマトペで、文章表現をもっと広げていこう
オノマトペは、表現の幅を広げられる修辞法です。
誰でも自然と使っているものですが、あえて取り入れることでオリジナリティのある文章に仕上げることも、よりわかりやすい文章にまとめることもできます。
ぜひ上手に取り入れて、もっと伝わる文章を書いていって下さい。