今回は日本語における「固有名詞」について解説します。
なんとなくは理解できている言葉だと思いますが、では「普通名詞とどう違うの?」と聞かれて、すぐに説明できる方はあまり多くありません。
この機会に、固有名詞と普通名詞の違いを確認しておいてください。
ちなみにもっと大枠の「名詞」については下記の記事で解説していますから、あわせて参考にしてください。
固有名詞とは
固有名詞とは、具体的なモノゴトを指し示す名称のこと。他の同類のものと区別をつけるために決められます。品詞分類で言えば、名詞の中でも「実質名詞」というジャンルに属する言葉です。
例えば「パソコン」といえば、さまざまな種類のものがありますよね。一つの具体的なものを指す言葉ではないため、固有名詞ではありません。
しかし「M1 chip Macbook Air」と言えば、指し示すものは一つですから、これは固有名詞です。
このように、具体的にそれだとわかる言葉を「固有名詞」といいます。
固有名詞と普通名詞(一般名詞)の違い
同類のものをひとまとめに表す言葉を、普通名詞(一般名詞)と呼びます。
例えば「パソコン」「雑貨屋」「カバン」などは、同類の様々なものをあらわすので「普通名詞」ですね。それら普通名詞に含まれる、ある一つのものを指し示すために決められるのが「固有名詞」です。
- 普通名詞:同類のものをひとまとめにあらわす言葉
- 固有名詞:具体的なモノゴトの名称
「普通名詞」の中に、より具体的な物モノゴト示す「固有名詞」がある、とイメージすればわかりやすいかもしれません。
その言葉が固有名詞なのか確認する方法
普通名詞なのか固有名詞なのか判断がつかないときは「商標登録」を確認しましょう。どこかの会社や個人が商標をとっている言葉は、すべて固有名詞です。
例えば「サランラップ」は、あのラップ全般を指す言葉かと思いきや、旭化成ケミカルズが商標を取っているので「固有名詞」です。「プリクラ」も、ゲーム会社のアトラスが商標をとっています。
思わぬ言葉が商標になっていることがありますので、眺めてみると面白いかもしれません。
固有名詞と普通名詞で間違いやすい言葉の例
世の中には、あたかも普通名詞かのように浸透している固有名詞があります。
正確に表記しなければいけないとき、誤って書くと思わぬトラブルになる可能性もありますから、間違いやすい言葉を覚えておきましょう。
「宅配便」と「宅急便」
「宅配便」は小口の物流荷物の総称ですから、普通名詞です。一方で「宅急便」は、実はヤマト運輸の商品名であり、商標をとっている「固有名詞」です。
知らなければ、普通に間違えて使ってしまいがちな言葉ですね。
「フリーコール」と「フリーダイアル」
0120で始まって無料でかけられる「フリーダイアル」ですが、実はNTTコミュニケーションズが商標をとっている固有名詞です。
無料でかけられる0120の電話番号は、普通名詞としては「フリーコール」と呼ばれています。これも、知っていなければ間違えてしまいやすい言葉ですね。
「ウォシュレット」と「温水洗浄便座」
トイレの「ウォシュレット」も、あの機構を全般的にそう呼ぶと思ってしまいそうですが、TOTOが商標をとっている固有名詞です。
普通名詞では「温水洗浄便座」と呼ばれる機構ですから、正確に表記しなければならないシーンでは間違えないようにしましょう。
「接着剤」と「ボンド」
あの木工用の白い接着剤である「ボンド」も、実はコニシ株式会社が商標をとっている固有名詞です。
見た目の違いから、ボンドと接着剤はまったく別の物質だと思っている方もかなり多いのが現状です。しかしあのボンドは、普通名詞では「接着剤」と呼ばれるものです。
「ストレッチポール」と「ストレッチ用ポール」
運動するときのストレッチに使う「ストレッチポール」ですが、株式会社LPNの商標であり、固有名詞です。普通名詞では、無理やりに「ストレッチ用ポール」などと呼ばれたりします。
ちなみに似たストレッチグッズの「フォームローラー」も、ミューラージャパン株式会社が商標をとっている固有名詞です。フィットネスグッズ関連は、よくよく確認したほうが良いかもしれません。
「色鉛筆」
色鉛筆は普通名詞かと思いきや、なんとカンロ株式会社が商標をとっている固有名詞です。
もはや文具のジャンルとして定着しており、突然「色鉛筆は固有名詞だよ」と言ったところで、何を言っているんだと怒られるかもしれないくらいの言葉です。
普通名詞として一般的に使われている言葉ですが、正確には固有名詞だと覚えておきましょう。
固有名詞と普通名詞は、知らなければ間違えてしまう言葉も多い
固有名詞と普通名詞の違い自体は、さほど難しい概念でもありませんから、理解しやすいかと思います。
しかし実際にその言葉が固有名詞なのか、普通名詞なのか判断するには、毎回検索して調べてみるしかありません。
本当に思わぬ言葉が「固有名詞」になっていたりしますから、とくにWebに公開する記事などでは、不用意に書くと「著作権違反」になってしまうことすらあります。疑わしい言葉は、それが普通名詞なのか固有名詞なのか、よくよく確認してから書くようにしましょう。