当記事では日本語文法における「助動詞」について解説します。
助動詞には13種類の言葉がありますから、それぞれの用法と活用がわかるよう、一覧にしてまとめました。ぜひこの機会に、おさらいしていって下さい。
また日本語文法の全体像は下記の記事で解説していますから、助動詞だけでなく全体的におさらいしたい方は、併せて参考にしてください。
助動詞とは
助動詞とは、言葉の後ろにつけることで意味を付け加える役割を持つ言葉のこと。単体では成立しない「付属語」で、活用があることが特徴の品詞です。
例えば「書く」という動詞は、「書かれる」「書かせる」「書かない」など、色々と語尾が変わって(活用して)様々な意味で使える言葉ですね。
上記例で「書く」の語尾についた「れる」「せる」「ない」といった言葉が、助動詞です。
単体では意味が通じず、このように他の言葉の語尾につくことで言葉を成り立たせる品詞だと覚えておきましょう。
助動詞の活用の種類
多くの助動詞は6段階で活用されます。
例として「せる」という助動詞を、「書く」という動詞につけて活用した表をご用意しました。
活用形 | 活用 |
---|---|
未然形 | 書か「せ」ない。 |
連用形 | 書か「せ」ます。 |
終止形 | 書か「せ」る。 |
連体形 | 書か「せる」とき |
仮定形 | 書か「せれ」ば |
命令形 | 書か「せろ」。 |
ただ全ての助動詞が上記6種類の活用をするわけではなく、一部ほぼ活用しない語もあります。
例えば「推量・意思」を示す「う」には、終止形と連体形しかなく、しかも言葉自体には変化がありません。
活用形 | 活用 |
---|---|
未然形 | 無し |
連用形 | 無し |
終止形 | う |
連体形 | (う) |
仮定形 | 無し |
命令形 | 無し |
単語例としては「行こう」「綺麗だろう」などに使われる「う」ですね。
このように助動詞はかなり不規則な活用や働きをする言葉ですので、丸暗記するというよりも、その言葉や役割ごとに細かく理解しておくと良いでしょう。
助動詞13種類の用法と活用
ここからは助動詞を大まかに分類しながら、用法や活用について解説していきます。
1. 「れる」「られる」の用法と活用
助動詞「れる」「られる」は「受け身・可能・自発・尊敬」の意味を与える言葉です。
- 受け身:「過ちを咎められる」など。誰かに何かをされる行為を示す。
- 可能:「トマトを食べられる」など。できることを示す。
- 自発:「思い出される」など。自然とその行為が行われる状況を示す。
- 尊敬:「来られる」など。尊敬語として使う。
活用は以下表の通りです。
活用形 | 「れる」 | 「られる」 |
---|---|---|
未然形 | れ | られ |
連用形 | れ | られ |
終止形 | れる | られる |
連体形 | れる | られる |
仮定形 | れれ | られれ |
命令形 | れろ | られろ |
2. 「せる」「させる」の用法と活用
助動詞「せる」「させる」は「使役」の意味を与える言葉です。
使役とは「書かせる」「見させる」など、誰かに何かをさせる行為を指します。
活用は以下表の通りです。
活用形 | 「せる」 | 「させる」 |
---|---|---|
未然形 | せ | させ |
連用形 | せ | させ |
終止形 | せる | させる |
連体形 | せる | させる |
仮定形 | せれ | させれ |
命令形 | せろ(せよ) | させろ(させよ) |
3. 「たい」「たがる」の用法と活用
助動詞「たい」「たがる」は「希望」の意味を与える言葉です。
「本を読みたい」「いつも肉を食べたがる」など、何かを行いたいという意思を示す言葉ですね。
活用は以下表の通り。
活用形 | 「たい」 | 「たがる」 |
---|---|---|
未然形 | たかろ | たがら |
連用形 | たかっ、たく | たがり、たがっ |
終止形 | たい | たがる |
連体形 | たい | たがる |
仮定形 | たけれ | たがれ |
命令形 | × | × |
4. 「た(だ)」の用法と活用
助動詞「た(だ)」は「過去・完了」「存続」の意味を与える言葉です。
- 過去完了:「たくさん食べた」「本を読んだ」など。過去に起こったことを示す。
- 存続:「少なくなった調味料を補充する」など。過去に起こって現在も存続している事柄を示す。
活用は以下表の通りです。
活用形 | 「た」 |
---|---|
未然形 | たろ(だろ) |
連用形 | × |
終止形 | た(だ) |
連体形 | た(だ) |
仮定形 | たら(だら) |
命令形 | × |
5. 「そうだ」の用法と活用
助動詞「そうだ」は「様態」「伝聞」の意味を与える言葉です。
- 様態:「今日は調子が良さそうだ」など。様子を示す。
- 伝聞:「彼は就職が決まったそうだ」など。人づてで聞いた情報を示す。
同じ「そうだ」でも意味がまったく変わりますので、様態と伝聞で活用が変わってきます。
活用形 | 様態の「そうだ」 | 伝聞の「そうだ」 |
---|---|---|
未然形 | そうだろ | × |
連用形 | そうだっ、そうで、そうに | そうで |
終止形 | そうだ | そうだ |
連体形 | そうな | × |
仮定形 | そうなら | × |
命令形 | × | × |
6. 「ようだ」の用法と活用
助動詞「ようだ」は「たとえ」「推定」「例示」の意味を与える言葉です。
- たとえ:「まるでプロのようだ」など。わかりやすいよう例を示す。
- 推定:「話はまだ続くようだ」など。おそらくこうだろうと推測した結果を示す。
- 例示:「彼のように上手くなりたい」など。例を示す。
活用は以下表の通りです。
活用形 | 「ようだ」 |
---|---|
未然形 | ようだろ |
連用形 | ようだっ、ようで、ように |
終止形 | ようだ |
連体形 | ような |
仮定形 | ようなら |
命令形 | × |
7. 「らしい」の用法と活用
助動詞「らしい」は「推定」の意味を与える言葉です。
「どうやら彼は試験に受かったらしい」など、推測して結論づけた事柄を示します。
活用は以下表の通り。
活用形 | 「らしい」 |
---|---|
未然形 | × |
連用形 | らしかっ、らしく |
終止形 | らしい |
連体形 | らしい |
仮定形 | らしけれ |
命令形 | × |
8. 「ます」の用法と活用
助動詞「ます」は「丁寧」なニュアンスを与える言葉です。
「本を読みます」など、いわゆる「です・ます調」の文章で一般的に使われる表現ですね。ただ仮定形を使った「本を読みますれば」といった言葉は現代では使いませんので、それだけは注意しましょう。
活用表は以下の通りです。
活用形 | 「ます」 |
---|---|
未然形 | ませ、ましょ |
連用形 | まし |
終止形 | ます |
連体形 | ます |
仮定形 | ますれ |
命令形 | ませ、まし |
9. 「だ」の用法と活用
助動詞「だ」は「断定」の意味を与える言葉です。
いわゆる「だ・である調」の文章で用いられる表現ですが、活用が少々特殊ですので、ご注意ください。
活用形 | 「だ」 |
---|---|
未然形 | だろ |
連用形 | だっ、で |
終止形 | だ |
連体形 | な |
仮定形 | なら |
命令形 | × |
連体形「な」のあとには「の・ので・のに」のみが続きます。
10. 「です」の用法と活用
助動詞「です」は「丁寧な断定」のニュアンスを与える言葉です。
「トマトが好きです」など、いわゆる「です・ます調」の文章で使われる言葉です。
活用は以下の通り。
活用形 | 「です」 |
---|---|
未然形 | でしょ |
連用形 | でし |
終止形 | です |
連体形 | です |
仮定形 | × |
命令形 | × |
11. 「う」「よう」の用法と活用
助動詞「う」「よう」は「推量」や「意思」の意味を与える言葉です。
「起きよう」「行こう」など、現代文では「これからそうしようと思う」という意思を表現する言葉ですが、古文的な表現では「〜だろう」という推量のニュアンスで使われます。
活用が特殊で、以下の通りです。
活用形 | 「う」 | 「よう」 |
---|---|---|
未然形 | × | × |
連用形 | × | × |
終止形 | う | よう |
連体形 | (う) | (よう) |
仮定形 | × | × |
命令形 | × | × |
12. 「ない」「ぬ」の用法と活用
助動詞「ない」「ぬ(ん)」は「打ち消し」や「否定」の意味を与える言葉です。
「意味がなかろう」「待たせぬ」「そんなことはさせん」など古文的な表現になりますので、現代文ではあまり使われません。
加えて活用も特殊ですので、知識として知っておいて下さい。
活用形 | 「ない」 | 「ぬ(ん)」 |
---|---|---|
未然形 | なかろ | × |
連用形 | なかっ、なく | ず |
終止形 | ない | ぬ(ん) |
連体形 | ない | ぬ(ん) |
仮定形 | なけれ | ね |
命令形 | × | × |
13. 「まい」の用法と活用
助動詞「まい」は「打ち消し推量」や「打ち消し意思」の意味を与える言葉です。
「彼のような大人にはなるまい」など少々古い言い回しになりますので、これも現代文ではあまり使われない、古典的な表現です。
活用形 | まい |
---|---|
未然形 | × |
連用形 | × |
終止形 | まい |
連体形 | (まい) |
仮定形 | × |
命令形 | × |
まとめ
助動詞は、全部まるまる覚えようと思うとかなり難易度の高い言葉です。
文章を書くうえで正しい表現がわからなくなったときに調べながら、少しずつ理解していきましょう。
まだ助動詞だけを見るのではなく、動詞や形容詞といった「文の成分」なども同時に理解することが大切です。あわせておさらいしておきましょう。