当記事では日本語文法における「受け身(受動態)」について解説します。
受け身や受動態という言葉の意味や種類、用法、普通の文章から変換するコツなどについてわかりやすくご紹介しますので、ぜひこの機会におさらいしていって下さい。
受け身(受動態)とは
日本語文法における「受け身(受動態)」とは、他から動作を受けることを示す文章表現のこと。対義語として、ごく一般的な文章を示す「能動態」があります。
- 一般文(能動態):「AがBにCした」
- 受け身(受動態):「BがAにCされた」
受け身文の例としては「背中を押された」「財布を取られた」「よく考えられたルールだ」などが挙げられます。
モノやコトが、他の何かから動作を受けたこと、あるいは受けていることを表現できるテクニックですね。
受け身と間違いやすい表現
「丁寧・尊敬」の意味合いで使われる「〜れる」は、受け身と間違われやすい表現です。
「社長が来られた」「用意したものはすべて綺麗に食べられた」など。
その文章の主語や、前後の文脈で判断する必要がありますので、誤った表現で使わないよう注意しましょう。これは「助動詞」の分野になりますので、わかりにくいという方は併せておさらいしておいて下さい。
受け身表現の種類
受け身は、大きく3つの種類に分けられています。知識として押さえておきましょう。
直接受け身
もっとも一般的な受け身表現が「直接受け身」です。
例えば「先生が僕を褒めた」→「僕は先生に褒められた」といったように、主語を入れ替えて述語を受け身表現にすれば、そのまま成り立っているようなシンプルな構文ですね。
一般化すると「AがBをCする(能動態)」が「BがAにCされる(受動態)」に変化するような形です。
第三者の受け身
少し複雑な構造になっている受け身表現が「第三者の受け身」です。
例えば「僕は運に恵まれた」という受け身表現には、能動態がありません。(「運が僕を恵んだ」とはいいません)
あるいは「僕は雨に降られた」という受け身表現は、そのまま能動態に変換しようとすると「雨は僕に降った」と誤った表現になります。どうしても能動態にしたいときは、主語を変えて「雨が降った」にするなど、少々捻る必要が出てきます。
一般化すると「第三者の受け身」の持つ特性は以下の通りです。
- 述語の持つ意味合いによっては、能動態に変換できない場合がある
- 能動態にはなかった言葉が、受動態では主語として扱われる場合がある
「被害を受ける」ようなニュアンスを含むため、昔から「被害の受け身」「迷惑受け身」とも呼ばれる表現です。
所有の受け身
誰かの持ち物や体の一部などに対し、外部から動作を受けるとき、その状況は「所有の受け身」で表現されます。
比較的わかりやすい表現だと思いますので、いくつかの例を元にご説明します。
- (私は誰かに私の)財布を盗まれた。
- (私は誰かに私の)手を掴まれた。
- (私は誰かに私の)顔を見られた。
例えば一つ目の文を能動態に変換すると「誰かが私の財布を盗んだ」となります。
一般化すると「AはBにCをDされた(受動態)」となり、これは「BがAのCをDした(能動態)」に変換できるような構造になります。
受け身の用法・具体例
ここからは、実際に文章を書くときに「受け身」が使われるシチュエーションをご紹介していきます。
やはり文章の基本は「能動態」ですので、受動態は「能動態では表現しにくいニュアンス」を伝えるために使うのが良いと考えます。
その具体的なシチュエーションを知っておいて下さい。
文章の主体を統一するために使う
文章を書くうえで「主体」や「視点」は定めておく必要があります。
Aさん視点の話をしていたのに、突然BさんやCさんが主体になった話をすると、文章がチグハグになってしまう恐れがあるからですね。
まずは悪い例をご覧ください。
上記文だと、もともと「私」の視点で話をしていたはずが、いつの間にか「先生」や「エンジニアの友人」に主体が移ってしまっています。
視点を統一するために、能動態と受動態をうまく使い分けていきましょう。
このように受動態を組み合わせて、視点がブレないように文を構成していきましょう。
評判について話すときに使う
Webライティングの現場では、サービスの評判を取り上げるような記事も多く執筆します。そこでも受動態が活躍しますので、この用法は覚えておきましょう。
例文をご覧ください。
- プロからも、とても使い勝手が良いと言われています。
- 多くの方から評価されています。
この辺りの表現を上手に取り入れることで、より読者に伝わりやすい記事に仕上がります。
習慣や慣習、ルールを示すときに使う
一般的な「外部から作用される」というシチュエーションのほかに、慣習やルールを示すときにも受動態が使われます。
例文をご覧ください。
- 「廊下は走らない」というルールが定められている。
- それは業務マニュアルで決められたことだ。
- 先祖代々伝えられている。
このように、何かしら定められたルールなどについて言及するときに受動態を使うことがあります。
慣用的な表現として使う
さらに受動態は、慣用的な表現で使われることも多い表現です。
- 運に恵まれる
- 後ろ指を刺される
など。現実にある事柄ではないため、能動態にするのが難しい用法です。
このような慣用表現を多く知っておくことも、よりわかりやすい文章を書く一つの助けになるでしょう。
まとめ
受け身(受動態)は、文章表現の幅を広げてくれる便利なテクニックです。
ぜひ上手に使えるようになって、よりわかりやすい文章を書けるようになっていきましょう。