今回は日本語文章における「PREP法」について解説していきます。
PREP法はWebライティングやビジネスメール、マニュアル作成など様々なシーンで役立つ文章術です。
対になる「SDS法」との違いもあわせてお伝えしますので、各記法を上手に使えるようにしておきましょう。
PREP法とは
PREP法とは「結論・理由・具体例・再結論」の順番で書く、相手に理解してもらうことを重視した文章術のこと。Webサイトやブログ記事、ビジネスメール、業務マニュアルなど、様々な場面で用いられます。
ちなみにPREP法というネーミングは、各項目を英語で表した際の頭文字からきています。
- 結論(Point)
- 理由(Reason)
- 具体例(Example)
- 再結論(Point)
頭文字を並べると「PREP」になります。なお読み方としては「プレップ」と呼ばれることがほとんどです。
PREP法の例文
「象の鼻」をテーマに、PREP法の例文を用意してみました。要するに下記のような文章が、PREP法で書かれたものです。
【結論】象の鼻が長いのは、なぜなのかご存知でしょうか?実はこれには「食糧事情」が大きく関係しています。
【理由】象はもともと鼻の短い生き物だったのですが、体が大きく進化するにつれて口だけでは食べ物や飲み物を満足に取れなくなったことで、どんどん鼻の長い個体が増えていったのだと言われています。現代の象は鼻の中に10リットル以上もの水を蓄えられる仕様になっており、効率を重視した進化だというわけです。
【具体例】例えば人間は、川に水を直接つけて飲むところから、手を使うことを覚え、コップを作ることを考えました。それと同じように、象は自らの体を便利に進化させてきたのです。
【再結論】要するに「食べにくいから進化しよう」ということで、今の鼻の長い象になったのです。
PREP法とSDS法の違い
PREP法とよく対比される手法として「SDS法」があります。下記の順番で書く、事実をわかりやすく伝える記法です。
- 要点(Summary)
- 詳細(Details)
- 要点(Summary)
頭文字を並べると「SDS」になります。なお読み方としては、そのまま「エスディーエス」と呼ばれることがほとんどです。
PREP法とSDS法は、下記の通りその特性と目的に違いがあります。
- PREP法の目的・特性
-
相手に理解してもらう目的で使う。筆者側に、その物事に関する深い理解が必要。
- SDS法の目的・特性
-
スピーディに事実を伝える目的で使う。筆者側に、原文を要約する力が必要。
それぞれ適しているシーンが違いますから、用途を知っておいてください。
PREP法が適しているシーン
PREP法を用いるのに適しているのは、以下のような「相手に理解してもらうことを重視するシーン」です。
- Webコンテンツ
- ブログ記事
- 業務マニュアル
- ビジネスメール
- メモ書き
自分がはっきりと理解していることを、わかりやすく伝える際に使います。
SDS法が適しているシーン
SDS法を用いるのに適しているのは、以下のような「事実をサラッとスピーディに伝えるシーン」です。
- ニュースメディア
- プレスリリース
- 社内報
- お知らせ欄
起きた事実を、スピーディに伝える際に伝えます。
ちなみに「小説」「物語」などは「起承転結」の順番で書くと良いとされており、PREP法やSDS法は適しません。
PREP法を用いるメリット
PREP法を用いると、文章を執筆する上で多くのメリットが得られます。3つに整理しましたので、まずはPREP法を使うべき理由を理解しておいてください。
読者から見て理解しやすい文章になる
PREP法を用いることで、要するに「結論ファースト」の文章になり、読者にとって理解しやすくなります。
結論(あるいは物事の全体像)を先に知っておいたほうが、理由や詳細についても理解しやすくなるのは、勉強などで経験があるのではないでしょうか。
例えばWebコンテンツにおいて、読者は決して文章を読みたいのではなく「何かの問題を解決したい」と思って訪れます。そんな人に物事の背景や理由から伝えると「まどろっこしい」と思われ、離脱されてしまうかもしれません。
PREP法を用いて結論から順序よく説明することで、よりスピーディに理解してもらいやすい文章に仕上げられるでしょう。
伝えるべき内容が自然と整理される
PREP法を用いて文章を書く場合、自然と「結局何をどう伝えたいんだろう」と整理されることになります。
しかしPREP法を意識せずになんとなく書き始めると、やはり伝えたいことがあちらにいったり、こちらにいったりフラフラして、結局何が言いたかったのかわからない文章になることも少なくありません。
書くべき要点を自然と整理できるのも、PREP法を用いて文章を書く大きなメリットの一つです。
文章力があることを相手に伝えられる
文章を生業にしている人間からすると、その文章をパッと見るだけで「筆者の文章力の有無」はすぐにわかります。
そこでは細かい文法がどうというよりも、結論ファーストになっていたり、根拠が示されていたりといった文章構成力が焦点になることがほとんど。
実際にライターのテストライティングを行う際にも、自然にPREP法が扱える人材なのかどうかはよくチェックします(綺麗にPREP法で書けるライターは、意外と多くありません)
PREP法を習得しているだけで、一定の文章力がある人材だと判断してもらえるのもメリットです。
PREP法で上手く書くコツ
それでは、実際にPREP法で文章を書く際のコツを解説していきます。
- 結論
- 理由
- 具体例
- 再結論
上記、PREP法にて書く順番の通りに、少し細かくポイントを押さえながら見ていきましょう。
1. 結論(Point)の書き方
最初の「結論」パートでは、その文章のお題目を示します。もう少し言えば「読者がその文章を読むメリット」を伝えるパートとして取り扱うと良いでしょう。
「その文章を読めば結局何がわかるのか」伝わる文を最初におくことで、読者からすると文章を読み進める心構えができるのです。
例えば「象」に関する話をするとき、最初の一文で
としておくと「ああ、象の話が始まるんだな」と伝わり、読者側からすれば読む準備が完了します。
しかし、
などとかなり前段階から話し始めると「一体何を聞かされるんだ?」と、読者がダレてしまいます。
よく「校長先生の話が長い」と言われるのは、結局学生から見て「自分にとってメリットのある話が聞けると思えない」から。
それと同じように、文章においても最初に「読むメリット」として結論を示すのがベターです。
2. 理由(Reason)の書き方
次の「理由」のパートでは、最初に示したお題目の根拠や理由について伝えます。
ここは実は文章力(あるいは構成力)の見せ所で「何に対する理由や根拠」を伝えるのか整理できていないと、チグハグな文章になってしまう場合が少なくありません。文章に説得力を持たせるためのパートですので、よく考えて書きましょう。
例えば「象の鼻が長い」という話題においては「象の鼻が長くなった理由」や「象の鼻が長くなった背景」などを話すとしっくりきそうです。
しかし仮に象の鼻が長いのが共通認識ではなかった場合は、そもそも「象の鼻が長い根拠」を話す必要があるかもしれません。
「何を誰に伝えるのか」によって、理由のパートで伝えるべきことは変わってきます。そこを上手く捉えて、その文章に説得力を持たせるだけの理由や根拠を書きましょう。
3. 具体例(Example)の書き方
「具体例」のパートは、お題目や理由で伝えた内容に関する理解を深めてもらうための要素です。
よって「その読者にとって馴染みのある例」を選ぶ作業が必要になり、それが文章の良し悪しを左右すると言っても過言ではありません。
例えば高校生の男の子にとって馴染みのある例と、30代のサラリーマンにとって馴染みのある例は変わってきます。あるいはその両方に伝えるような対象の広い文章であれば、誰もにわかりやすい具体例を選ぶ必要があるかもしれません。
読者を置いてけぼりにしてしまうと意味がありませんので、あくまで読者がより理解を深められるように具体例を用意しましょう。
4. 再結論(Point)の書き方
「再結論」のパートは、最後にもう一度結論を伝えることで記憶に残してもらうための要素です。
ここでは結論で伝えたお題目をそのまま伝えるのではなく「要するにこういうことだよ」と総まとめにした内容を書くのがコツ。要約力や、その事柄に対する理解が試される項目です。
象の鼻が長いことやその理由をただもう一度伝えるのではなく「要するにこんな話です」と要約してまとめるのが「再結論」のパートです。
前章でも掲載したものですが、総まとめとしてPREP法の例文を以下に用意しました。こちらも参考にしながら、理解を深めていって下さい。
【結論】象の鼻が長いのは、なぜなのかご存知でしょうか?実はこれには「食糧事情」が大きく関係しています。
【理由】象はもともと鼻の短い生き物だったのですが、体が大きく進化するにつれて口だけでは食べ物や飲み物を満足に取れなくなったことで、どんどん鼻の長い個体が増えていったのだと言われています。現代の象は鼻の中に10リットル以上もの水を蓄えられる仕様になっており、効率を重視した進化だというわけです。
【具体例】例えば人間は、川に水を直接つけて飲むところから、手を使うことを覚え、コップを作ることを考えました。それと同じように、象は自らの体を便利に進化させてきたのです。
【再結論】要するに「食べにくいから進化しよう」ということで、今の鼻の長い象になったのです。
PREP法のデメリットと注意点
PREP法はとても便利な文章術ですが、実際に使いこなすには訓練が必要です。
デメリットや注意点も理解しておきましょう。
誰に対する「結論」なのか明確でなければ、主旨がブレる
PREP法は端的に物事を伝えられる一方で、誰に向けているのか明確でなければ、本当に誰にも伝わらない文章になる可能性があります。
事実をありのまま伝える記法ではなく、要約して「こういう場合はこうですよ」と「誰か」に伝えるための文章術ですから、誰に向けた文章なのか特に明確にしましょう。
例えば「文章力をトレーニングするのは◯◯なメリットがある」と伝えたいとき、届ける相手が小学生なのかサラリーマンなのかによって、最初の結論や具体例で伝えるべき事柄がまったく変わってきます。細かい言い回しなども考える必要があるかもしれません。
文章はそもそも誰かを動かすために書くものですが、PREP法で書く際は特にその点に注意が必要です。
書く事柄について深い理解が必要
何かのお題目についてPREP文章を書くには、その事柄についてよく理解しておかなければなりません。
根拠が乏しい場合、具体例がイマイチ共感できない場合は、かえってわかりにくい文章になってしまうこともあります。少しわかっている人から見れば「なんとなく想像だけで書いてるな」と思われてしまったり、アラが見えやすい記法でもあります。
これが物事をありのまま伝えるSDS法であれば、調べたものを順序よく伝えれば良いのですが、PREP法は「理解」が重要です。
PREPな文章を書く前には、かならずその事柄について調べ、体験し、深く理解する必要があります。
文が機械的になりやすい
PREP法で書く場合、機械的な文章にならないよう注意しましょう。
特に初心者の場合は書く順番だけに気を取られて、まるでロボットが書いたような文章になってしまう方が少なくありません。
冗談抜きで、上記のような文章をそのまま書いてしまう初心者ライターが多いのです。
文末表現を工夫したり、文の繋がりがスマートになるよう意識したりと、読者が読みやすい文章を書けるよう心がけておきましょう。
まとめ
PREP法は「読者にもっとわかりやすく伝えるため」に用いるべき用法です。
それを忘れず、ただその順番で書くだけでなく「どうすればもっと要点が伝わるだろう」と注意しながら書いていきましょう。
下記の記事では「良い文章を書くコツ」を他にも色々とご紹介していますので、あわせて参考にしてみて下さい。