当記事では、日本語文法における修辞法(レトリック)について解説します。
文章を豊かに彩るには、そのシーンに適した修辞法を使うと良いでしょう。
修辞法の中でも特に役立つ10種類の表現技法を、具体例を入れながらまとめましたので、ぜひ文章執筆の参考にして下さい。
修辞法(レトリック)とは
修辞法(レトリック)とは、言葉を巧みに操り、表現豊かな文を書く技法のこと。
修辞法という言葉はギリシア語の「レトリケ」が語源となった「rethoric」を日本語に訳したものですので「レトリック」の呼び名の方が馴染みがある方も多いかもしれません。
そんな修辞法が用いられる目的は、文章に深みを出すことです。
文章を書く目的はどこまでいっても「読み手を動かすこと」ですので、それを達成するには読みやすく、思わず引き込まれてしまうような文章に仕上げる必要があります。
修辞法を用いると、伝え方のニュアンスを変えたり、文のリズムを操ったり、主張に説得力を持たせたりと、ただただ文字を書き連ねるよりも格段に戦略的な文章が書けるのがメリット。
文章の本来の目的を達成しやすくするために、上手に修辞法を取り入れていきましょう。
修辞法(レトリック)10種類の使い方と用例
それでは、ライターが文章執筆の現場で使いやすい修辞法を10個ご紹介していきます。
具体例を用いながらわかりやすくご紹介していきますので、ぜひ気になる修辞法を取り入れてみて下さい。
1. 比喩
比喩とは、その物事を別の物事に例えて表現する文章術のこと。「直喩・隠喩・換喩・提喩」の4つの種類に分けられます。
- 直喩
-
それが例え話であることをわかりやすく示した比喩表現のこと。
例)朝日を反射する川のきらめきは、まるで宝石のようだ。 - 隠喩
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それが例え話であることを直接示さずに例えを用いる比喩表現のこと。
例)彼はこの部署の頭脳だ。 - 換喩
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共通認識のある物事を省略してあらわす際に用いられる比喩表現のこと。
例)僕はミスチルをよく聴く。 - 提喩
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物事の中の一部を指して、全体を表現する比喩表現のこと。
例)彼女は活字に目がない。
それぞれ、物事の説明を読者によりわかりやすく伝えるために用いられる表現です。
下記の記事で詳しく解説していますので、参考にして下さい。
2. 擬人法
物事の行動や様子を人間に例えて表現する修辞法のことを「擬人法」と呼びます。
鳥たちの合唱が聴こえる。
擬人法を用いることで、シンプルかつ表現豊かな文に仕上げられるのがメリットです。
下記の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみて下さい。
3. 擬態法(オノマトペ)
音や声、物事の様子などを文字に起こして表現する修辞法を「擬態法(オノマトペ)」と呼びます。
- シーソーをギコギコと鳴らしながら遊ぶ。
- 犬がワンワンと鳴いている。
このように音を言葉で表現することで、読者にその情景をイメージさせるような効果を狙えます。
元々フランス語の「onomatopēe(オノマトペ)」が語源であり、後から「擬態法」という漢字が当てられたことから、擬態法よりも「オノマトペ」の名称の方が馴染みのある方が多いかもしれません。
4. 倒置法
倒置法とは、一般的な文からあえて語順を入れ替えて表現する文章術のこと。
僕はニコラ・テスラを尊敬している。
↓
僕は尊敬している、ニコラ・テスラを。
上記のように語順を入れ替えることで、印象深い文に仕上がります。
下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみて下さい。
5. 体言止め
体言止めとは、文末を体言(名詞)で止める文章表現のこと。
コーヒーを淹れるのが、朝の日課の一つ。
体言止めを単体で使うと、余韻を残したような文に仕上がるのがメリット。
また「です・ます調」や「だ・である調」の文と組み合わせながら使うことで、文末表現に抑揚をつけてリズムを調整するような効果も狙えるなど、活躍の場が多い修辞法です。
倒置法と少し似ていますが、倒置法の文末は「〜を」「〜が」などの助詞を伴うのに対し、体言止めは名詞で文が終わるという部分に違いがあると覚えておいて下さい。
6. 反語
断定したい内容を強調するためにあえて疑問文の形をとる修辞法を「反語」と呼びます。
こんなチャンスをみすみす逃す奴がいるだろうか。(いや、いない)
一般的には上記例文のように「AはBだろうか」の形を取り、その後実際には書かないものの、暗に「いや、ない」が続くような文が「反語」になります。
反語を用いることで、同意を求めるニュアンスを含めながら強く断定する表現になります。
7. 緩叙法
ものごとに対して直接的な主張をせず、その逆の意味のことを否定して伝える修辞法を「緩叙法」と呼びます。
たまにはこんな忙しい日も悪くない。
「良い」と言わず「悪くない」と伝えることで、遠回しに肯定している微妙なニュアンスを表現できます。他には「好き」の代わりに「嫌いじゃない」もよく使われます。
8. 前辞反復法
「AはB、BはC、CはD、…」と、関連性のある言葉を順番に綴っていくような修辞法を「前辞反復法」と呼びます。
スターウォーズの有名な名言に「前辞反復法」が使われたものがありますので、そちらを例としてご紹介します。
恐れはダークサイドに通じる。恐れは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛へ。
(出典:スターウォーズエピソード1 ヨーダのセリフ)
「前辞反復法」を用いると、伝えたいことを強調しながら順序立てて説明できます。また自然と格言のような言い回しになりますので、講演などでもよく使われる手法です。
9. 対照法
ネガティブなことを伝えた後に、それをポジティブに変えるような表現を重ねる修辞法を「対照法」と呼びます。
生きていればつらいこともある。しかしつらい経験をするほど、生き様に深みが出るのだ。
ことわざで言えば「災い転じて福となす」をあらわすような表現ですね。
元々はよく英語で使われるテクニックで「When life gives lemons , make lemonade(逆境に負けずベストを尽くせ)」ということわざが有名。
対照法を用いることで、説明する内容に説得力を持たせる効果が得られます。
10. 陽否陰述法
物事の一部は否定しつつも、結果的に強くそうであると主張するような表現技法に「陽否陰述法」があります。
事情があるのはわかった。だが、納期に遅れたのは事実だ。
陽否陰述法を用いることで、主張したいことをより強く伝える効果が狙えます。
対照法と少し似ていますが、陽否陰述法は「説得力」を求めたものではなく、追求したり主張を通したりする目的で使う修辞法です。
まとめ
修辞法(レトリック)は、文章を書く目的である「人を動かすこと」をより実現しやすくするための便利なツールです。
ただしあまり頻繁に使いすぎると、文章が回りくどく、またわかりにくくなってしまうことも少なくありません。
ぜひここぞというタイミングで上手に取り入れて、よりわかりやすく、魅力的な文章を書いていきましょう。
下記の記事では「良い文章を書くコツ」を他にも色々とご紹介していますので、あわせて参考にしてみて下さい。