今回は日本語文法における「補助動詞」について解説します。
あえて勉強しなければ馴染みのない言葉だと思いますが、文章を書くうえで「補助動詞」の概念を知っておくことは大切です。
「漢字とひらがな、どちらで書けば良いんだろう?」と悩んだときの手助けにもなりますから、知識として押さえておいてください。
また日本語文法の全体像は下記の記事で解説していますから、全体的におさらいしたい方は、併せて参考にしてください。
補助動詞とは?本動詞との違いを解説
補助動詞とは、別の「動詞」をサポートする役割でつかわれる「動詞」のこと。
動詞は「補助動詞」と「本動詞」に分かれており、下記の違いがあります。
- 本動詞:その言葉単体で使われている動詞のこと
- 補助動詞:本動詞をサポートするために使われた動詞のこと
例えば「見る(みる)」という言葉は、その場面によって「空を”見る”」「走って”みる”」と、別の意味で使われます。
「空を見る」の「見る」は、単体で成り立っているので「本動詞」です。一方で「走ってみる」の「みる」は、本動詞の「走る」をサポートする用途で使われているので「補助動詞」です。
同じ「動詞」の言葉でも、使う文脈によって「本動詞」と「補助動詞」の違いが出てくることを覚えておきましょう。
「そもそも動詞ってなに?」と困る場合は、下記の記事も参考にして下さい。
補助動詞と本動詞の見分け方
ではその言葉が補助動詞なのか本動詞なのか見分けるには、どうすれば良いのでしょうか。
見分け方を2パターンご紹介しておきます。
その言葉を削除しても、文の意味が通るか
もっとも正攻法の見分け方は、その言葉を削除して意味が通るか考えてみることです。
「貰った」という動詞について、例文を用意して考えてみました。
- プレゼントを貰った
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「貰った」を削除すると「プレゼントを」だけが残り、意味が通らない。よって「貰った」は本動詞だと判断できる。
- プレゼントを贈ってもらった
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「もらった」を削除しても「プレゼントを贈って」と、だいたい何が言いたいのかわかる。よって「もらった」は補助動詞だと判断できる。
その言葉を削除したときに、意味がまったく通らなくなれば本動詞。なんとなく意味がわかれば補助動詞です。
漢字表記か、ひらがな表記か
補助動詞は「ひらがな」で、本動詞は「漢字」で表記するのが一般的です。
文章を見たときに、本来漢字でも表記できる動詞が「ひらがな」で書かれていれば、それは「補助動詞」だと判断する手助けになります。
ただし、執筆者によってはその限りではなく、あくまで慣習的なルールで成り立っているものです。一つの目安として押さえておきましょう。
この「あえて漢字をひらがなにする」という行為を「漢字をひらく」といいます。下記の記事で解説していますから、あわせて参考にしてみて下さい。
補助動詞と本動詞の両方でつかわれる動詞一覧
最後に、補助動詞と本動詞どちらでも使われる代表的な動詞を、一覧でご紹介しておきます。
動詞 | 補助動詞と本動詞の使い分け |
---|---|
頂く(いただく) | よくしていただく(補助動詞) プレゼントを頂く(本動詞) |
行く(いく) | うまくいく(補助動詞) 会社へ行く(本動詞) |
置く(おく) | よく聞いておく(補助動詞) 荷物を置く(本動詞) |
下さい(ください) | 歩いてください(補助動詞) サインを下さい(本動詞) |
見る(みる) | 空を眺めてみる(補助動詞) 空を見る(本動詞) |
来た(きた) | 行ってきた(補助動詞) 家に来た(本動詞) |
出す(だす) | 動きだす(補助動詞) 荷物を外に出す(本動詞) |
居る(いる) | 見ている(補助動詞) 家に居る(本動詞) |
上げる(あげる) | プレゼントをあげる(補助動詞) 荷物を棚に上げる(本動詞) |
まとめ
補助動詞について理解しておくと、普段の言葉えらびが少しスムーズになります。
補助動詞は、ほかの動詞をサポートする用途で使われる言葉で、主に「ひらがな」で書かれます。本動詞はそれ単体で成り立つ言葉で、多くの場合「漢字」で書かれます。
「これは漢字で書くべき?それともひらがなで?」と悩むことも減りますから、丸暗記するというよりも、概念的に理解しておきましょう。